コンプレックスよりも『笑顔を見たい』という気持ちを大切に
--華やかなステージの上で繰り広げられるライブ。そこに立つアーティストたちは、美しく、才能にあふれ、観る者が嫉妬するほどに人生を謳歌しているように見える。
いわゆるメジャーシーンとライブハウスシーンの垣根が曖昧になるなか、これまででは考えられないほど大きな規模で活躍する独立系アーティストが続々と生まれている。
しかし、その華やかな活動の裏には、ファンからは想像もできないほど壮絶な闘いが隠れていることも事実だ。時としてその闘いはアーティストを大きく育て、新たな音楽を生み出すことにも繋がっている。
「いまだにステージに立つと足は震えますし、時々人の目が怖くなることもあります。
元々歌にコンプレックスを持っているので、みなさんの前で歌うことが恐いのですが、『伝えたい』『笑顔を見たい』という気持ちがそれを上回っているんです。
シンガーソングライターという型にはまらず、自分が出来る精一杯のことを表現できたらいいなと思うと、パッとスイッチが入りますね」
--そう話してくれたのは、2018年10月18日にマイナビBLITZ赤坂で単独公演を行うシンガーソングライターの小野亜里沙(おの・ありさ)さん(小野さんのtwitter@hamukoman)。
人懐っこい笑顔と天真爛漫なキャラクターで人気を博す、いま人気急上昇中の彼女は、ライブハウスシーンに主軸を置きながらもduo MUSIC EXCHANGEやヤマハホールなどの大規模会場での単独公演を次々に成功させてきました。
今回は、そんな小野さんの生い立ちや、ライブハウスのステージに立ち続ける理由、そしてこれからの活動についてじっくりとお話し頂きました。
YouTube-「マイナビBLITZ赤坂小野亜里沙単独公演CM」
小野亜里沙
10月18日生まれ B型
福岡生まれ、千葉育ちのピアノ弾き語りシンガーソングライター。
さまざまな経験を乗り越え「誰かの希望になりたい」と思い音楽の道に進む。
意外性のある楽曲からメッセージ性が強い楽曲まで、幅広く独自の世界観を持っている。
2008年12月、シンガーとしてステージデビュー。
2010年路上ライブを約半年で100回達成。
2014年8月、アルバム「7センチのヒール」の全国流通を開始。
2016年10月、渋谷duo MUSIC EXCHANGE、2017年10月にヤマハホールにてバースデーワンマンライブを成功させる。
さらに2018年10月18日、マイナビBLITZ赤坂にて単独公演が決定!
日本テレビの音楽番組「TOKYOヒットガール」に出演、「歌うま清楚系美女東京ヒットガール」に認定される他、全国発売「週刊ゴルフダイジェスト」にモデルとして1ページ連載される。
2014年ハウステンボス音楽祭世界9ヶ国日本代表として出演など、様々な場面で活躍。
特技である「後ろ向きでピアノを弾く」パフォーマンスでヘアケア用品のコマーシャルに出演するなど、活動の幅を大きく広げている。
いつか私も、誰かの希望になりたい
小野さん、はじめまして。
実は小野さんとちゃんとお話しするのは今日がはじめてなんですが、ライブは見せていただいたことがあって。
あれは確か赤坂グラフィティで、どなたかの主催イベントの時だったと思うんですが、『ハイトーンで特徴的な声だなあ』ってすごく印象に残りました。
そうですね。声が高いのは昔からなんです。
実家にいたころ、インターホンに出たときに『お母さんはいますか?』と子供に間違われたりすることもよくありました(笑)
確かに初めてだと間違うかもしれない(笑)
でもそれが今では歌手活動をしていくうえでひとつの武器のようになっていますよね!
小野さんが最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃なのでしょうか?
わたし昔からピアノが好きで、小さいときにはピアノ教室に通ってたんです。
でもピアノを習うというよりも、自由に好きな曲を演奏したり、先生とお話をしにいく、という感覚であまり真剣なレッスンをしていたわけではありませんでした。
では小野さんがピアノに目覚めたのは?
初めて買ったCDです。リチャードクレイダーマンというピアニストの、『渚のアデリーヌ』というCDをずっと聴いていたんです
子供にしてはシブいチョイスですね!
そうですか?(笑)
父親が音楽好きで、家ではいつも音楽が流れていました。
車の中ではビートルズやカーペンターズなどの音楽がかかっていたりして、自然と洋楽が好きになっていたみたいです。
父は趣味でベースを弾いたりしていたみたいで、母もときどき人前で歌を歌ったりしてたみたいです。二人とも本格的に音楽活動をしていたわけではないんですけど。
大人になってから知ったんですけど、家族みんな音楽が好きでそれぞれ音楽をやっていたみたいですね。
芸能活動に興味はなかった
そんな音楽一家で育ったからこそプロのミュージシャンを目指したんですね。
真剣にアーティストになりたいと思ったのは何かきっかけがあったんですか?
17歳か18歳くらいの時に川嶋あいさんの音楽に出会ったことです。
『なんて説得力のある音楽を奏でるシンガーソングライターさんなのだろう』と思って、音楽を演奏することに興味を持ち始めたんです。
川嶋さんと出会った時期は、私の生活の中でいろいろと辛い出来事が重なって精神的に参っていた時期と重なっていて、川嶋さんの音楽のおかげで『いつか私も、誰かの希望になりたい』って思えるようになりました。
それから人生がガラッと変わりました。
家族に反対されたり周りからは無理だと言われたりもしましたが、有名なモデルさんや女優さんのいる事務所に所属して、芸能活動を始めたんです。
最初はミュージシャンじゃなかったんですね。
その頃は主に演技などのレッスンを受けていたのですが、正直あまりしっくりこなくて・・・
しっくりこなかったとは??
演技をすることは好きで楽しかったんですが、自分が本当にやりたいこととは違うなって。
ちょうどその時に、カメラの前で踊ったりその場で曲を作って歌うレッスンがあったんですが、今までの出来事で感じてきたことを曲にしてみんなの前で歌ったら、他のレッスン生が涙を流してくれたんです。
そのとき『亜里沙の言葉が伝わった』と言ってもらえたことで、シンガーソングライターになろうと決めたんです。
そういう事だったんですね。でも、もともと芸能活動には興味があったんですか?
いえ、あんまりなかったです。(笑)
え!そうなんだ!(笑)
私には芸能界で戦える武器が何もなかったので、まずは行動してみよう、と思ってオーディションを受けたんです。
人前に立つための基本的な技術を学んだり、ある程度の知名度を手に入れたいと思ったのもありますね。
あの、これは個人的な感触なんですけど、小野さんってかなりシャイな方じゃないですか?
!!!すごくシャイです!(笑)
よかった!!(笑)
シャイな性格だと芸能界に入ろうってあまり思わないと思うんですが、どうしてこの道を選んだんですか?
少し重たい話になるのですが、親の離婚だったり、周りの大事な人たちが離れていってしまったりということが重なって、精神的に不安定になって身体に不調をきたした時期があるんです。
病気で入院しているときも『なんでこんなところにいるんだろう』と、自分や周りの人たちにマイナスの感情を抱いてしまって。元気がないので自分の気持ちもコントロールできませんでした。
でも、そうやって思い悩んだ時期があったからこそ、なかなか外に出られないで苦しんでいる人たちにも届く歌を作れているんだと思います。
世の中にはあの時の自分と同じような人達がたくさんいるんだ、今は私が頑張って伝える番なんだ、という気持ちはぶれずに持ち続けてますね。
ステージ上では『息をしている』感覚
なるほど。過去の苦しい経験がっあったからこそ、同じ境遇にいる人たちに届く言葉を紡げるんですね。
しかしもともとシャイな性格だと、人前に立つと緊張して足が震えたり、言葉が出てこなかったりすることがあるんじゃないかなと思うのですが、いかがですか?
そうですね。足はいまだに震えますし、時々人の目が怖くなることもあります。
元々歌にコンプレックスをもっているので歌うことが怖いのですが、それ以上に『伝えたい』という気持ちのほうが強いです。
そしてなにより『笑顔が見たい』という気持ち。
シンガーソングライターの型にはまらず、自分が出来る精一杯のことで表現できたらいいなと思うと、パッとスイッチが入りますね。
ステージ上ではある意味『演じている』感覚なんですか?
いや、『息をしている』という感覚ですね
『息をしている』?
ステージこそが、自分の居場所だと思っています。演じている感覚はなくて、あ、ここが私の居場所なんだなって。
私、日頃元気に楽しく過ごしてるのですが、どこか寂しさを感じていて。
でも、ステージに立って笑顔が見られるとそんな感情は吹っ飛んで、『わたし、生きているな』と感じます。
幸せになったら私には何も残らないんじゃないかって思っています
なるほど。ちなみに初ステージの時のことは覚えていますか??
覚えてます(笑)
MCにすごく力を入れていました(笑)
今のわたしのイメージだと想像がつかないかもしれないんですけど…。まだそんなに音楽としてはちゃんとしてないまま、やるぞ!という気合いだけでライブハウス出演を決めてから、2か月後くらいにステージに上がりました。
短い出演時間だったので、カバー曲2曲と合間でMCをして。歌はさておき、まずはMCで笑顔になってもらいたいと思って、ショートコントとかしてました(笑)
シンガーがショートコント(笑)ちなみにウケましたか?
いや、スベりました(笑)
(一同笑)
たしか僕が初めて小野さんのステージを見た時もちょっとスベってました(笑)でも気にせず元気にやりきるメンタルはすごいですよね(笑)
わたし、スベってることに気づいてないんです(笑)
(一同爆笑)
いや、さすがに最近は気付くようになってきてますけど(笑)今年くらいからですかね
今年からですか?(笑)
けっこう深刻な悩み事も一年後に気づいたりとか…とにかく遅いんです(笑)
つらいこととか全部蓋をして生きてきたので、それが原因なのかも知れません。
そんな私でも、時々突然感情が溢れるときがあるんです。
そのときはどんな風になるんですか?
もう大変ですね。家でふさぎこんでしまいます。
でも曲ができるんですよね。
いいんだか悪いんだか…逆に幸せだったら曲は書いてないかもしれません。幸せになってしまったら私には何も残らないんじゃないかって。常に思ってますね。
小野さんはいつも笑顔で朗らかで、ちょっとした冗談で周りを常に笑顔にしているような方なので、そのコミュニケーション能力は天性のものだとばかり思っていました。
今回の取材で、小野さんの周りを笑顔にする力は、ご自身が笑顔になれない辛さをよく知っているからこそ身についたものだということがよく分かった気がします。
自分の力だけではどうしようもないことを変えるためには、周りの人を笑顔にして、一緒に前を向いて進んでいくーーそんな力が必要なのかもしれません。
「笑顔を見たい」という気持ちを大切にする。
忙しい生活の中で忘れがちな、大切な価値観を思い出させてくれた気がします。
次回は、そんな小野さんが挑むマイナビBLITZ赤坂でのライブについて詳しく迫ります。
Text by 比屋根リサ (@hiyanelisa)
Edited by DJ Nobby (@787nobby)